日本語の難しいところといえば、敬語ですよね。
ネイティブの日本人でさえ、間違った敬語の使い方をしている人はたくさんいます。
今回のお話は、
「持参」と「申し出」は謙譲語であることを知るべし!
というお話です。
尊敬語と謙譲語
みなさんは、敬語には尊敬語と謙譲語があるということはご存知ですか?
尊敬語というのは、目上の人に対して使う言葉。相手を敬う意味合いの言葉です。
例:「来る」→「いらっしゃる」
謙譲語というのは、目上の方に対して自分をへりくだるときに使う言葉です。自分を下げることで相手を立てる、という意味合いがあります。
例:「来る」→「参ります」
また、この2つは主体が異なり、尊敬語は相手が主体の言葉で、謙譲語は自分が主体の言葉遣いとなります。
主体となる対象は違いますが、どちらも相手を立てた言葉遣いとなります。
このように、主体となる対象が違う尊敬語と謙譲語ですが、両者を混同するケースが多くみられます。
「持参」と「申し出」
「当日は筆記具をご持参ください」という一文を見てみましょう。
「筆記具を持ってきてください」の意味で使う「ご持参ください」という敬語。
実はこの「持参」とは、もともと「持って参る」という謙譲語で、自分をへりくだって言うときに使う言葉です。
謙譲語の主体は自分なので、自分が「持って行く」ときに「見本の商品を持参しました」とか、「ご確認いただきたい書類がありますので持参します」のように使います。
「筆記具をご持参してください」という場合も「ご持参して」は「ご持参する」の活用形なので、謙譲語であることに変わりはありません。
相手に何かものを持ってくるように頼むときは「お持ちになってください」「お持ちください」とする方が適切です。
相手に「持ってきてください」と伝える場合、使うのは相手を主語とする尊敬語です。
尊敬語「お(ご)~になる」を使い「お持ちになってください」とするか、「~になる」を省いた尊敬語「お(ご)~ください」を用い「お持ちください」とします。
「当日は筆記具をご持参ください」
↓
「当日は筆記具をお持ちになってください」 または
「当日は筆記具をお持ちください」
自分が「持っていく」場合は、謙譲語「お(ご)~する」を用いて「私が筆記具をお持ちします」とし、すでに謙譲の意を持つ「持参」は使わない方が無難でしょう。
似たような使い方をする言葉に「申し出る」があります。
「自分から言う」という意味の謙譲語なので、「退会することを申し出ました」のように自分の行為に対して使います。
相手の行為に使う場合は「委員会参加の可否をお申し出ください」より「委員会参加の可否をお知らせください」とする方が適切です。
まとめ
<「持参」と「申し出」の使い方>
●相手に依頼する場合
→ 必要書類をお持ちになってください。
→ 必要書類をお持ちください。
→ 必要書類をお持ちいただけますか。
→ 幹事が可能かどうかお知らせください。
●自分からする場合
→ 必要書類を持参します。
→ 幹事を引き受けると申し出ました。
相手の行為に「ご持参ください」「お申し出ください」を使うことは誤用ではないようです。
しかし、本来は謙譲の意の言葉で、自分の行為に用いる言葉であることは知っておくといいですね。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
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